相談室に笑顔が戻った日:ドローンスクール式アプローチで不登校の子どもたちに夢中になれる時間を

プレイスポット

永遠に続く「どうすればいいですか?」の日々

「どうすればいいでしょうか?」

新潟県村上市の相談室「楽楽」で、精神保健福祉士の滝波厚子さんは、
この言葉を何度聞いたことでしょう。
不登校の子どもたち、そして悩む親御さんたち。
深刻な相談ばかりが続く中で、誰もすっきりしない時間が永遠と重ねられていました。

「本人たちもすっきりしないし、周りもすっきりしない。
テーブルに向かい合って『何か困っていますか?』と聞いたって、結局変わらない」

スクールソーシャルワーカーとして新潟県下越地区の小・中学校を担当し、
同時に地域の相談室も運営する滝波さん。

作業療法的なリハビリアプローチを取り入れ始めていた滝波さんは、
特に男の子たちが夢中になれるもの、没入できるものを探していました。

女の子への支援方法は見つけやすかったものの、
男の子が「食いつく」ものがなかなか見つからずにいたのです。

運命の出会い「ビジネス交流会」での一言

転機は、ある日のビジネス交流会でした。

「ドローンを使って不登校の支援をしている方がいらっしゃいますよ」

かのまたさんからのこの一言が、
滝波さんの新しい支援スタイルを生み出したのです。

「これだ!」と直感した滝波さん。探していたのは、
子どもたちが「没入状態」「夢中になる状態」を作り出し、
エネルギーを蓄えて次のステップに進むためのツールでした。

まさにドローンは理想的な道具だったのです。

「世界大会に出場したら、学校でどや顔できるよ」

そんな妄想も広がって、すぐに飛びついたのだそうです。

最初の2-3分で起こる「没入感」

実際にドローンを導入してみると、想像以上の変化が起こりました。

「最初の2-3分で、気づいたら夢中になっています。」

従来の1対1の面談形式ではなく、ドローンを操縦しながらの新しい相談スタイル。
30分から1時間という時間の中で、
子どもたちの表情がどんどん変わっていくのがわかりました。

変化の瞬間を目撃する喜び

  • 笑顔が生まれる: まず何より表情が明るくなる
  • 「次」への意欲: 「また次やりたい」「次も来たい」という前向きな言葉
  • 周囲への波及効果: 先生方や親御さんも笑顔を見れて喜ぶ

「やったことは見たことあるけど、やったのは初めて」という子どもたちの反応。
没入感、夢中になっている状態でエネルギーが溜まり、
気持ち的にも楽しくなった状態で話をすると、
「こんなことやってみたい」といったポジティブな意見が出やすくなるのです。

「全国のソーシャルワーカーに使ってほしいツール」

1対1から集団まで:柔軟な活用方法

滝波さんのドローン活用は多岐にわたります:

個別相談での活用

  • スクールソーシャルワーカーとしての学校での面談
  • 相談室「楽楽」での個人相談
  • 家庭訪問時の持参ツール

親子での体験
「親子で来てくださって、体験していただきました。
パパもお子さんも夢中になってましたね」

一緒に体験することで、親子関係にも新しい変化が生まれています。

集団での活用
小学校でドローンクラブが創設され、8人のメンバーと一緒に活動。
市内のドローンスクールとも連携した本格的な取り組みに発展しました。

持ち運び可能な「移動式ドローンスクール」

「私、多分移動式だと思います」と滝波さん。

どこにでも持っていけるドローンの特性を活かし、
学校、相談室、家庭と場所を選ばない支援が可能になりました。
この機動力こそが、従来の相談スタイルとの大きな違いです。

「世界大会」という魔法の言葉

「みんな『世界』っていうとびっくりするし、
『私、予選出たんだよ』っていうと、もう聞く耳が違うんです」

世界大会という響きが子どもたちに与えるインパクトは絶大でした。
ただ遊ぶだけではなく、「世界を目指せる」という大きな目標があることで、
子どもたちの意識も変わります。

控えめな男の子にも起こった変化

知的なレベルが低く、いろんなことが上手にできない控えめな男の子。
クラスでも「俺やりたい!」と前に出るタイプではありませんでした。

最初は「壊すんじゃないか」と心配して触らなかった子も、いつの間にか触って操縦するように。
家庭訪問で持参した際も、似たような子が最終的には興味を示してくれました。

理想の未来:コラボレーションによる新しい支援モデル

相談員としての葛藤と理想

「ドローンはツールとして最高なんだけれども、
管理とかそういうのが大変で。
私の役割じゃないなっていうところも最近考え始めてるんです」

正直な思いを語る滝波さん。
相談員としての専門性を活かしつつ、ドローンの専門家との協働を模索しています。

描く理想の支援モデル

フリースクール型の展開

  • ドローンを使った元気づくりのクラブ活動
  • プラス、カウンセリング・相談機能
  • 不登校の子どもたちが通ってくる新しいスタイル

包括的なサポート体制

  • ドローンの練習(世界大会への挑戦)
  • 気持ちが向いたら学習プリント一枚
  • 保護者との連携・サポート
  • 必要に応じた医療機関との連携

 「お父さんやお母さんもサポートしつつ、
みんなで連携してお子さんをサポートすることができる」

全国の支援者への提言:エネルギーチャージ型支援のススメ

従来の支援との根本的な違い

従来型:
問題解決 → 話を聞く → なかなか変化しない

新アプローチ:
エネルギーチャージ → 夢中体験 → 前向きな変化

「どうせ聞いたって変わらないんだったら、エネルギー蓄えられる何か楽しいことしよう」

この発想の転換が、支援の質を根本的に変えました。

導入を検討する支援者への実践的アドバイス

効果的な時間設定

  • バッテリー2台分で約30分
  • 集中できる適切な時間
  • 表情の変化が見える十分な長さ

活用場面の多様性

  • 個別相談での導入ツール
  • 親子関係改善のきっかけ
  • 集団活動での核となる体験
  • 家庭訪問時の関係構築ツール

期待できる効果

  • 即座に現れる笑顔と表情の変化
  • 「次への意欲」の醸成
  • ポジティブな発言の増加
  • 相談への受け入れ体制の向上

まとめ:一人の挑戦が変える支援の未来

「私は道具としては、ツールとしてはありかなと思います」

控えめに語る滝波さんですが、その実践は全国の支援者に大きなヒントを与えています。

ドローンを活用した支援は、単なる「遊び」ではありません。
科学的根拠に基づいた作業療法的アプローチであり、
プレイセラピーの新しい形です。

何より、子どもたちが「夢中になれる時間」を通じてエネルギーをチャージし、
次のステップに向かう力を蓄える画期的な手法なのです。

不登校支援に悩む全国のフリースクール、相談機関、そして支援者の皆さん。
滝波さんの実践から学べることは数多くあります。
まずは一歩、子どもたちの笑顔を取り戻す新しいツールとして、
ドローンの可能性を検討してみてはいかがでしょうか。

相談室に笑顔が戻る日は、きっとすぐそこにあります。


取材協力 精神保健福祉士の相談室 楽楽
新潟県教育庁下越教育事務所 スクールソーシャルワーカー
滝波 厚子さん(精神保健福祉士・社会福祉士)

〒958-0854 村上市田端町10-6
TEL: 090-7529-9113

ホームページ
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